かぐや姫の物語の琴って何?

かぐや姫の物語の琴って何?

スタジオジブリの名作『かぐや姫の物語』で、かぐや姫が美しい音色を奏でる琴のシーンに心を奪われた方も多いのではないでしょうか。

実はあの琴、私たちがよく知る「お琴」とは全く違う楽器なんです。

高畑勲監督がこだわり抜いたのは、古典文学の世界で天人や皇族だけが奏でたとされる幻の楽器「七絃琴」でした。

この記事では、かぐや姫の物語に登場する琴の正体と、なぜこの楽器が選ばれたのか、その深い意味や制作秘話まで詳しくお伝えします。

映画を観た後にもう一度見返したくなるような、知られざる琴の物語をご紹介しますね。

かぐや姫の物語に登場する琴の正体

かぐや姫の物語に登場する琴の正体

映画『かぐや姫の物語』で姫が演奏する琴は、七絃琴(しちげんきん)と呼ばれる中国由来の楽器です。

現代の日本でよく見る箏(そう、いわゆる「お琴」)とは全く異なる楽器で、古典文学では天人や皇族など特別な血筋の人物だけが奏でる高貴な楽器として描かれてきました。

高畑勲監督は、かぐや姫という異世界から来た存在の神秘性を表現するために、あえてこの幻の楽器を選んだのです。

七絃琴が選ばれた理由

七絃琴が選ばれた理由

古典文学における七絃琴の特別な位置づけ

七絃琴は、日本の古典文学の中で非常に特殊な役割を担ってきました。

遣唐使によって中国から日本に伝わりましたが、平安時代には実用的な楽器としては定着せず、むしろ物語文学の中で象徴的な存在として登場するようになったのです。

『源氏物語』と七絃琴

平安時代を代表する文学作品『源氏物語』では、光源氏や女三宮といった皇統の人物だけが七絃琴を演奏する設定になっています。

これは、この楽器が高貴な身分の証であったことを示しています。

一般の貴族でさえ手にすることができない、特別な楽器だったんですね。

『うつほ物語』の秘琴伝授

『うつほ物語』では、七絃琴の秘曲伝授がメインテーマとなっています。

物語の中で、遣唐使の俊蔭が天人から秘曲を学ぶという設定は、まさにかぐや姫が天人であることと重なる要素ですよね。

この物語のテーマが、『かぐや姫の物語』で七絃琴が選ばれた大きな理由の一つとなっています。

『竹取物語』との繋がり

『かぐや姫の物語』の原典である『竹取物語』は、平安時代初期に成立した作品です。

この物語にはアジア舶来品への憧れや、異国の高貴なものへの関心が反映されており、七絃琴もそうした文脈の中で関連付けられています。

かぐや姫という異世界の存在が七絃琴を演奏することは、古典文学の伝統からすると極めて自然な設定だったのです。

かぐや姫が完璧に弾く意味

映画の中で、かぐや姫が翁の前で突然、完璧に七絃琴を弾くシーンがあります。

これは教わったわけでもないのに弾けるという、異人(天人)の血筋ゆえの才能を表現しているんです。

普通の人間には到達できない境地を、生まれながらに持っているという姫の本質が、この楽器を通して描かれているんですね。

七絃琴という楽器の特徴

見た目と構造の違い

七絃琴は、現代の箏(そう)とは見た目から全く異なります。

主な特徴は以下の通りです。

  • 1枚の板に7本の弦を張った構造
  • 柱(じ)と呼ばれる支えがない
  • 全長は約120センチメートル
  • 胡坐をかいて足の上に乗せて演奏する

箏が13本の弦を持ち、柱で音程を調整するのに対して、七絃琴はシンプルながら奥深い構造を持っています。

演奏方法の特殊性

七絃琴の演奏方法は、三味線やギターに近い形です。

正座ではなく胡坐をかいて、楽器を足の上に乗せて弾くという、日本の伝統楽器としては珍しいスタイルなんですね。

この演奏姿勢も、中国から伝わった文化を色濃く残しています。

音色の特徴

七絃琴の音色は、箏よりもくぐもった響きを持っています。

華やかさよりも、落ち着いた深みのある音が特徴で、静寂の中で響くその音色は、まさに天上の音楽を思わせます。

映画の中でこの音が流れると、かぐや姫の内面の静けさや、彼女が本来いた世界の雰囲気が伝わってくるんですよね。

映画制作における七絃琴の扱い

高畑勲監督のこだわり

高畑勲監督は、映画の音楽制作において古琴(こきん、七絃琴の別称)を指定しました。

この楽器へのこだわりは、単なる時代考証ではなく、かぐや姫という存在の本質を表現するための重要な選択だったのです。

監督は古典文学に精通しており、七絃琴が持つ象徴的な意味を深く理解していたんですね。

録音の課題と解決策

しかし実際の制作では、録音の制約から完全な古琴ではなく、古箏(こそう)という楽器を使用することになりました。

古箏は古琴に近い楽器ですが、より録音に適した音響特性を持っています。

それでも七絃琴のイメージを損なわないよう、慎重に音作りが行われました。

事前収録という異例の手法

映画では、音を絵に合わせるのではなく、事前に音楽を収録してから絵をつけるという異例の手法が採用されました。

これは、琴の演奏が劇中で非常に重要な役割を果たすため、音楽を先に完成させて、その音に合わせて姫の動きをアニメーションで表現するためでした。

この手法により、琴の音色と映像が完璧に調和した、印象的なシーンが生まれたのです。

劇中での琴の役割

姫の琴演奏は、映画の中でハイライトとなる重要なシーンです。

わらべ唄や天女の歌と連動し、単なる感情表現ではなく、物語の本質を支える役割を果たしています。

琴の音色が流れる瞬間、観客は姫が本当は何者なのか、どこから来たのかを感覚的に理解できるんですね。

七絃琴の歴史と現在

日本への伝来と衰退

七絃琴は、遣唐使によって奈良時代から平安時代にかけて日本に伝わりました。

しかし実用的な楽器としては定着せず、平安時代には既に演奏できる人がほとんどいない状態になっていました。

それでも文学作品の中では、高貴さや神秘性の象徴として描かれ続けたのです。

江戸時代の復興

一度は失われた七絃琴ですが、江戸時代に入って復興の動きがありました。

1639年に明から日本に渡来した東皐心越(とうこうしんえつ)という僧侶が、この楽器を再び日本に伝えたのです。

その後、浦上玉堂(うらかみぎょくどう、1745-1820)という文人が著名な奏者となり、彼が作った七絃琴が現在も米子市立山陰歴史館に保存されています。

昭和以降の状況

しかし江戸時代の復興も長くは続かず、昭和初期には再びほぼ途絶えてしまいました。

現代の奏者は、戦後に復興運動を始めた方々の流れを汲んでいます。

三味線や箏のような家元制度が存在しなかったことが、継承が途絶えた大きな要因とされています。

現在の七絃琴

現代において、七絃琴を演奏できる人は非常に限られています。

復興努力は続いていますが、演奏事例は極めて稀で、主に以下のような場面で見られる程度です。

  • 古典文学の研究発表会
  • 特別な文化イベント
  • 博物館での実演
  • 一部の音楽愛好家による個人的な演奏

まさに幻の楽器という表現がぴったりの存在なんですね。

SNSでの反響と視聴者の気づき

映画を観た人の感想

『かぐや姫の物語』を観た多くの人が、琴のシーンに特別な印象を受けたようです。

SNSでは「あの琴のシーンで泣いた」「なぜか分からないけど心に響いた」という感想が数多く見られます。

これは、七絃琴の持つ象徴的な力が、無意識のうちに観客に伝わっているからかもしれませんね。

楽器の違いに気づいた人の声

音楽や歴史に詳しい視聴者の中には、「あれは普通の琴じゃない」と気づいた人もいます。

「箏とは違う楽器だと思ったら七絃琴だった」「高畑監督のこだわりがすごい」といった、専門的な視点からの感想も見られますね。

一度この知識を得てから映画を見直すと、また違った感動があるという声も多いんです。

古典文学ファンの反応

『源氏物語』や『うつほ物語』を読んだことがある人からは、「七絃琴を選んだことに感動した」という声が上がっています。

古典文学の知識があると、なぜかぐや姫がこの楽器を弾くのかという深い意味が理解できるんですよね。

「監督は本当に古典を理解している」「こんな細部にまでこだわるから傑作なんだ」といった賞賛の声も多く見られます。

まとめ:かぐや姫の物語の琴が伝えるもの

『かぐや姫の物語』に登場する琴は、現代の箏ではなく七絃琴という幻の楽器です。

この楽器は、古典文学において天人や皇族など特別な存在だけが奏でる高貴な楽器として描かれてきました。

高畑勲監督がこの楽器を選んだのは、かぐや姫という異世界から来た存在の神秘性と高貴さを表現するためでした。

七絃琴は、『源氏物語』『うつほ物語』といった古典文学の中で、特別な血筋の証として登場してきた楽器です。

映画の中で姫が教わることもなく完璧に弾けるのは、彼女が天人であることの証なんですね。

実際の制作では古箏を使用し、事前収録という異例の手法で音と映像を調和させました。

現代では演奏者がほとんどいない幻の楽器ですが、だからこそ映画の中でその音色が響く瞬間は、特別な意味を持っているのです。

もう一度、映画を観てみませんか

この記事を読んだ今、もう一度『かぐや姫の物語』を観ると、琴のシーンがまったく違って見えるはずです。

姫が琴を奏でる指の動き、その音色、そして周囲の人々の反応。

すべてに深い意味が込められていることが分かりますよね。

高畑勲監督が古典文学の知識を総動員して作り上げた、細部へのこだわりを感じてみてください。

きっと、初めて観たときとは違う感動が待っていますよ。

そして可能であれば、『源氏物語』や『うつほ物語』といった古典文学にも触れてみてください。

七絃琴が登場する場面を読むと、なぜこの楽器が特別なのかがより深く理解できるはずです。

映画と古典文学、その両方を味わうことで、かぐや姫の物語はさらに豊かな広がりを見せてくれるでしょう。

キーワード: かぐや姫の物語,琴