
『となりのトトロ』は1988年の公開以来、世代を超えて愛され続けている国民的アニメーション映画ですよね。
でも、この作品を生み出した宮崎駿監督がどんな思いで制作し、どのような背景があったのか、意外と知られていないことも多いんです。
この記事では、宮崎駿監督と『となりのトトロ』の関係性について、制作当時のエピソードや込められた思い、作品が生まれた背景まで詳しくお伝えします。
監督の創作哲学や、なぜこの作品が今も色褪せない輝きを放ち続けているのか、その秘密がわかりますよ。
宮崎駿監督が『となりのトトロ』で描いたもの

『となりのトトロ』は、宮崎駿監督がスタジオジブリで手がけた第4作目の長編アニメーション映画で、1988年4月16日に公開されました。
この作品は、昭和30年代前半の日本を舞台に、入院中の母の療養所に近い農村へ引っ越してきた小学6年生のサツキと4歳の妹メイが、森の主「トトロ」や「ネコバス」などの不思議な生き物と交流するファンタジーです。
宮崎駿監督は、この作品を通じて「テレビのなかった時代」の子どもたちの冒険と、日本の原風景を描き出しました。
特定の年代というよりも、戦後の郷愁に満ちた世界観を表現することで、多くの人々の心に響く普遍的な物語を生み出したんですね。
なぜ宮崎駿は『となりのトトロ』を作ったのか
子ども時代への郷愁と原体験
宮崎駿監督が『となりのトトロ』を制作した背景には、自身の子ども時代への深い郷愁がありました。
監督は戦後間もない時代に少年期を過ごし、まだ自然が豊かに残る日本の風景の中で育ちました。
その原体験が、この作品の根幹を成しているんですね。
「テレビのなかった時代」という設定は、単なるノスタルジーではなく、子どもたちが自然の中で想像力を働かせて遊んでいた時代への敬意が込められています。
子どもの視点で描く日常の魔法
宮崎駿監督の作品の特徴は、子どもの視点から世界を描くことです。
大人には見えないものが子どもには見える――この発想が『となりのトトロ』の核心にあります。
トトロは、サツキとメイにしか見えない存在です。
これは子どもだけが持つ純粋な心や想像力の象徴であり、宮崎監督が一貫して大切にしてきたテーマなんですね。
日常の中にある小さな魔法、ありふれた風景の中に潜む不思議――それを見つけ出す子どもの力を、監督は信じて描き続けています。
母の不在という現実と向き合う
この作品には、もう一つ重要なテーマがあります。
それは母の不在という現実です。
サツキとメイの母親は入院中で、二人は父親と共に新しい環境で暮らし始めます。
子どもたちは不安を抱えながらも、日々を懸命に生きています。
宮崎駿監督自身も、母親が病気で長期入院していた経験があり、この設定には自伝的な要素が含まれているとされています。
トトロとの出会いは、そんな子どもたちの心の支えとして機能しているんですね。
ファンタジーでありながら、現実の困難に向き合う子どもたちの姿を丁寧に描いているところが、この作品の深みとなっています。
自然との共生というメッセージ
宮崎駿監督の作品には、常に自然との共生というテーマが流れています。
『となりのトトロ』でも、塚森の大クスノキに住むトトロは森の主であり、自然そのものの化身として描かれています。
監督は、高度経済成長期を経て失われていく日本の自然や風景に対する危機感を持っていました。
だからこそ、まだ自然が豊かだった昭和30年代の世界を舞台に選び、子どもたちと自然の精霊との交流を描いたんです。
これは単なる環境保護のメッセージではなく、自然の中で生きることの豊かさや喜びを伝えたいという思いから生まれています。
シンプルさの中にある深い物語性
『となりのトトロ』のストーリーは、実は非常にシンプルです。
派手な冒険があるわけでもなく、大きな事件が起こるわけでもありません。
しかし、そのシンプルさの中に深い物語性と情緒が詰まっているんですね。
宮崎駿監督は、物語を複雑にすることよりも、日常の中にある小さな発見や喜び、そして子どもたちの成長を丁寧に描くことを選びました。
サツキとメイがトトロたちと一緒に木の実をまき、満月の夜に一晩で大木が育つ魔法のシーンや、トトロが不思議なコマに乗ってメイたちを空へ連れていく場面は、言葉では説明できない感動を与えてくれます。
また、メイが迷子になった時にネコバスが助けるエピソードは、姉妹の絆と成長を象徴する重要なシーンとなっています。
制作当時の状況と宮崎駿監督の挑戦
興行的には厳しいスタート
意外かもしれませんが、『となりのトトロ』は公開当初、興行成績が振るいませんでした。
1988年の公開時は、『火垂るの墓』との二本立て上映という形でしたが、観客動員数は期待されたほど伸びなかったんです。
派手なアクションや明確な悪役がいない、静かで叙情的な作品は、当時のアニメ映画の流行とは少し異なっていました。
しかし、宮崎駿監督は商業的な成功よりも、自分が描きたい世界を表現することを優先したんですね。
評価の逆転と国民的作品への道
公開当初は興行的に苦戦した『となりのトトロ』でしたが、その後映画賞の受賞や映画雑誌での高い評価により、大きな人気を獲得しました。
特に、ビデオやテレビ放送を通じて作品に触れた人々が増え、じわじわと人気が広がっていったんです。
主題歌「さんぽ」は保育園や幼稚園の定番ソングとなり、トトロのキャラクターは日本を代表するアイコンになりました。
今では、スタジオジブリのシンボルマークにもトトロが使われるほど、作品の価値が認められています。
時代を経て評価が高まった作品の典型例と言えるでしょう。
約86分に込められた完成度
『となりのトトロ』の上映時間は約86分と、比較的短めです。
しかし、この短い時間の中に、無駄のない完璧な物語構成が詰め込まれています。
宮崎駿監督は、説明的なセリフを極力排し、映像と音楽で語ることを重視しました。
だからこそ、言語や文化の壁を超えて、世界中の人々に愛される作品になったんですね。
『となりのトトロ』を通じて見える宮崎駿の創作哲学
アニメーションでしか表現できないものを描く
宮崎駿監督は常に、アニメーションでしか表現できないものを描くことにこだわっています。
トトロという存在は、実写では決して再現できない魅力を持っています。
身長約2メートルの巨体で、言葉を話さず、表情と咆哮でコミュニケーションを取るトトロは、まさにアニメーションならではのキャラクターです。
また、ネコバスという不思議な乗り物も、アニメーションの自由な表現力があってこそ実現できたものなんですね。
子どもを主人公にする意味
宮崎駿監督の作品では、しばしば子どもが主人公になります。
それは子ども向け作品だからという単純な理由ではありません。
子どもは、大人が失ってしまった純粋さや好奇心、そして世界を新鮮に見る目を持っています。
サツキは小学6年生でしっかり者のお姉さんですが、まだ子どもらしさを失っていません。
妹のメイは4歳で、素直でやさしく、好奇心旺盛です。
この二人の姉妹を主人公にすることで、監督は子どもの視点から見た世界の不思議さと美しさを描き出したんですね。
説明しすぎない勇気
『となりのトトロ』の魅力の一つは、すべてを説明しないことです。
トトロとは何なのか、なぜサツキとメイにだけ見えるのか、明確な説明はありません。
宮崎駿監督は、観客の想像力に委ねることを恐れませんでした。
説明しすぎないことで、作品は観る人それぞれの心の中で異なる意味を持つようになります。
この「余白」が、作品を何度観ても新しい発見がある豊かなものにしているんですね。
SNSやファンの声から見る作品の影響力
世代を超えて受け継がれる感動
SNSでは、『となりのトトロ』に関する投稿が今も絶えません。
「子どもの頃に観て感動した作品を、今度は自分の子どもと一緒に観られて幸せ」という声が多く見られます。
親から子へ、そして孫へと、世代を超えて受け継がれる作品になっているんですね。
公開から35年以上経った今でも、テレビで放送されるたびにSNSのトレンドに入るのは、その証拠と言えるでしょう。
「トトロに会いたい」という普遍的な願い
「子どもの頃、本気でトトロに会えると信じていた」という投稿も頻繁に見かけます。
大人になった今でも、「トトロがいたらいいのに」という願いを持ち続けている人は少なくありません。
これは、宮崎駿監督が描いたトトロという存在が、単なるキャラクターを超えて、人々の心の中に生き続けている証拠です。
現実の厳しさに疲れたとき、トトロの存在を思い出すことで心が癒されるという声も多く聞かれます。
ジブリ作品の入り口として
『となりのトトロ』は、多くの人にとってスタジオジブリ作品との最初の出会いとなっています。
「トトロから始まってジブリの他の作品も好きになった」という人は非常に多いんです。
それは、この作品が持つ普遍的な魅力と、年齢を問わず楽しめる作りになっているからでしょう。
ファンの間では、「ジブリで一番好きな作品はトトロ」という意見も根強く、宮崎駿監督の代表作として確固たる地位を築いています。
ロケ地巡りと聖地化
作品の舞台のモデルとなった場所を訪れる「ロケ地巡り」も人気です。
埼玉県の所沢周辺や、狭山丘陵などが舞台のモデルとされており、多くのファンが訪れています。
SNSには「トトロの森に行ってきた」という投稿が数多く見られ、作品の世界観を実際に体験したいという思いが伝わってきます。
また、三鷹の森ジブリ美術館では『となりのトトロ』関連の展示も人気で、作品が観光資源としても大きな影響力を持っていることがわかります。
音楽の力
主題歌「さんぽ」は、保育園や幼稚園の定番ソングとして定着しています。
「さんぽを歌うと子どもの頃の楽しかった記憶が蘇る」という声も多く、音楽が持つ力の大きさを感じさせます。
久石譲が手がけた音楽は、映像と一体となって作品の世界観を支えており、宮崎駿監督との名コンビぶりを示しています。
まとめ:宮崎駿監督が『となりのトトロ』で伝えたかったこと
宮崎駿監督が『となりのトトロ』を通じて伝えたかったのは、子どもの視点から見た世界の不思議さと美しさ、そして日常の中にある小さな魔法でした。
昭和30年代前半の日本を舞台に、自然の中で生きる喜びと、想像力の大切さを描いたこの作品は、公開当初こそ興行的に苦戦したものの、時間をかけて多くの人々の心をつかみ、今では国民的作品となっています。
監督自身の子ども時代の経験や、母親の入院という自伝的要素も織り込まれながら、普遍的なテーマを持つ物語として完成されました。
トトロという言葉では説明できない不思議な存在は、子どもだけが持つ純粋な心の象徴であり、大人が失ってしまった何かを思い出させてくれる存在なんですね。
約86分というシンプルな構成の中に、無駄のない完璧な物語が詰め込まれ、説明しすぎない余白が観る人それぞれの想像力を刺激します。
世代を超えて愛され続ける理由は、宮崎駿監督が商業的な成功よりも自分が描きたい世界を表現することを優先し、アニメーションでしか表現できないものを追求した結果だと言えるでしょう。
さあ、もう一度『となりのトトロ』を観てみませんか
『となりのトトロ』を最後に観たのはいつですか?
子どもの頃に観た作品を、大人になった今観返すと、また違った発見があるはずです。
宮崎駿監督が込めた思いや、細かな演出の意味も、人生経験を重ねた今だからこそ理解できることもたくさんあります。
もし、まだ観たことがないという方がいらっしゃったら、ぜひこの機会に観てみてください。
きっと、あなたの心の中にもトトロが住み着いて、疲れたときや悲しいときに、そっと寄り添ってくれるようになるでしょう。
映画を観終わったら、近くの森や公園を散歩してみるのもいいかもしれません。
日常の中にある小さな魔法に気づけるかもしれませんよ。
宮崎駿監督が『となりのトトロ』で伝えたかった世界を、あなた自身の目で確かめてみてくださいね。