
『となりのトトロ』と『火垂るの墓』が同じ日に公開されたことをご存じですか?
しかも、1回の入場料で両作品を観ることができる「2本立て」という形式だったんですね。
心温まるファンタジーと戦争の悲劇という、まったく対照的な2作品の組み合わせに、当時の観客はどのような順番で観ていたのでしょうか。
この記事では、1988年の同時上映における上映順番の実態や、この異例の組み合わせが生まれた背景、そして順番が観客体験に与えた影響について詳しくご紹介します。
スタジオジブリ史上初の2本立て上映の真実を、一緒に見ていきましょう。
同時上映の順番に明確な決まりはなかった

『となりのトトロ』と『火垂るの墓』の同時上映では、明確な固定順番は設定されておらず、劇場によって上映順が異なっていた可能性が高いというのが結論です。
高畑勲監督自身が「どちらを先に観るかという問題。『火垂るの墓』を先に観た人はかわいそうでしたね」と語っていることからも、順番が選択可能だったことが分かります。
つまり、ある劇場では『火垂るの墓』が先で『となりのトトロ』が後、別の劇場では逆の順番だった可能性があるんですね。
この柔軟な上映順は、当時の映画興行システムならではの特徴だったと言えるでしょう。
なぜ上映順番が固定されていなかったのか
1980年代の映画興行システムの特徴
1988年当時の映画館では、2本立て上映が一般的な興行形式でした。
現代では同時上映といえば、メイン作品に短編アニメを添える形が主流ですよね。
しかし当時は、長編作品同士を組み合わせて上映することが珍しくなかったんです。
『となりのトトロ』(上映時間約86分)と『火垂るの墓』(上映時間約88分)を合わせると、合計約3時間という大ボリュームになります。
このような長尺の2本立ては、当時の観客にとって「お得感」のある娯楽形式として受け入れられていました。
劇場ごとの判断に委ねられていた理由
配給会社や製作側が厳密な上映順を指定しなかったため、各劇場が独自に判断できたと考えられます。
劇場側は以下のような要素を考慮して、上映順を決定していたのでしょう。
- 観客の入退場のタイミング
- 上映スケジュールの組みやすさ
- 地域の観客層の特性
- 劇場スタッフの判断
つまり、全国一律の決まりではなく、各劇場の裁量に任されていたというわけですね。
2作品の性質の違いが順番選択に影響
『となりのトトロ』は心温まるファンタジー、『火垂るの墓』は戦争の悲劇を描いた重厚な作品です。
この極端に異なる作品性が、上映順の選択をより重要なものにしていました。
高畑勲監督の「『火垂るの墓』を先に観た人はかわいそうでしたね」という発言は、順番が観客の心理状態に大きく影響することを示しています。
重く暗い戦争映画を観た後に、明るいファンタジーで心を癒すという順番を選んだ劇場もあったでしょう。
逆に、楽しいファンタジーを先に観て、その後に重厚な作品に向き合うという順番もあり得たわけです。
スタジオジブリ側の意図と認識
ジブリ側もこの組み合わせを「攻めた」試みと認識していました。
高畑勲監督は公開前に「子どもに観せていいのか不安」と振り返っています。
プロデューサーの鈴木敏夫が、徳間書店から「地味」と難色を示された『となりのトトロ』の企画を実現させるために、『火垂るの墓』との2本立てを提案したのが始まりでした。
つまり、この同時上映は興行的な戦略として生まれたものであり、芸術的な意図で順番を指定するというよりも、両作品を確実に世に送り出すことが最優先だったと言えるでしょう。
同時上映の具体的なエピソードと反応
高畑勲監督の証言から分かること
高畑勲監督の「どちらを先に観るかという問題」という発言は、非常に重要な証言です。
この言葉からは、以下のことが読み取れますね。
- 上映順が統一されていなかったこと
- 順番によって観客体験が大きく変わったこと
- 制作側もその影響を認識していたこと
「かわいそうでしたね」という表現には、『火垂るの墓』の重さを先に受け止めた観客への同情が込められています。
暗く悲しい物語を観た後に、明るいトトロを観ても、なかなか気持ちを切り替えられなかったかもしれません。
宮崎駿と高畑勲の対照的な関係性
興味深いことに、宮崎駿監督は『火垂るの墓』を厳しく批判したとされています。
この2人のダブルネームによる公開は、25年ぶりに再現されるまでなかった貴重な機会でした。
同時上映という形式は、図らずも両監督の作品観の違いを際立たせることになったんですね。
宮崎駿のファンタジーと高畑勲のリアリズムという対比は、アニメーション表現の多様性を象徴するものとして、後の世代に大きな影響を与えました。
観客が受けた心理的影響
当時の観客は、1回の映画鑑賞で全く異なる2つの感情体験を味わうことになりました。
『火垂るの墓』を先に観た場合、戦争の悲惨さと子どもたちの死という重いテーマに心を打ちのめされます。
その直後に『となりのトトロ』の明るい世界を観ても、気持ちの切り替えが難しかったという声があります。
一方、『となりのトトロ』を先に観た場合は、ファンタジーの世界を楽しんだ後に現実の重さを突きつけられる形になります。
どちらの順番でも、観客は複雑な感情を抱えて映画館を後にしたことでしょう。
スタジオジブリ史における位置づけ
この同時上映は、スタジオジブリ史上初の2本立て上映として記録されています。
1988年公開以来、両作品ともジブリの不朽の名作として語り継がれていますね。
特に後追い世代にとって、この2作品が同時上映だったという事実は、大きな驚きとして受け止められています。
現代の視点から見ると、なぜこの2作品を組み合わせたのか不思議に思える方も多いでしょう。
しかし、当時の興行事情とジブリの立場を考えれば、この決断は必然だったと言えるのです。
SNSやファンの間での反応
インターネットが普及した現代では、この同時上映について様々な意見が交わされています。
「トトロと火垂るの墓が同時上映だったなんて信じられない」という驚きの声が多く見られますね。
「どちらを先に観たかで、その後の人生観が変わりそう」といった考察も投稿されています。
また、「現代では絶対に実現しない組み合わせ」という指摘もあり、1980年代の映画興行の特殊性が再認識されています。
ファンの間では「もし今この組み合わせで上映されたら、どちらの順番で観たいか」という議論も盛んです。
現代の同時上映との比較
現代のアニメ映画の同時上映は、メイン作品に短編作品を添えるスタイルが主流です。
例えば、仮面ライダーシリーズなどでも短編との組み合わせが一般的ですね。
長編2本を組み合わせるという1980年代のスタイルは、上映時間の感覚が現代とは大きく異なります。
合計約3時間という長さは、現代の観客にとってはかなりのボリュームに感じられるでしょう。
また、現代では作品のトーンを揃える傾向が強く、『となりのトトロ』と『火垂るの墓』のような対照的な組み合わせは実現しにくいと言えます。
まとめ:順番の自由が生んだ多様な体験
『となりのトトロ』と『火垂るの墓』の同時上映では、明確な固定順番は存在せず、劇場ごとに上映順が異なっていました。
高畑勲監督の証言からも、順番が観客体験に大きな影響を与えたことが分かりますね。
1980年代の映画興行システムでは長編2本立てが一般的で、各劇場が独自に判断して上映順を決定していました。
この柔軟な形式により、観客によって異なる体験が生まれたわけです。
『火垂るの墓』を先に観た人は重い余韻を引きずりながら『となりのトトロ』を観ることになり、逆の順番では楽しい気分から一転して戦争の現実に向き合うことになりました。
スタジオジブリ史上初の2本立て上映として、この組み合わせは興行的な必要性から生まれたものでしたが、結果としてアニメーション表現の多様性を示す象徴的な出来事となったのです。
当時の映画体験を想像してみませんか
今ではテレビ放送や配信サービスで別々に観ることが当たり前になった2作品ですが、当時の観客は1回の映画館訪問で両方を体験していたんですね。
もし現代でこの組み合わせが再現されたら、あなたはどちらの順番で観たいですか?
重い作品から先に向き合って、最後に癒しを求めるか、それとも楽しい気持ちから始めて、深い余韻で終わるか。
正解はありません。
どちらの順番でも、それぞれに意味のある体験になるはずです。
この記事をきっかけに、久しぶりに両作品を観返してみるのもいいかもしれませんね。
そして、もし当時の同時上映を体験した方が身近にいたら、どちらの順番で観たのか、どんな気持ちで映画館を出たのか、ぜひ聞いてみてください。
きっと、映画史に残る貴重な体験談を聞くことができるでしょう。