
日本最古の物語として知られる『竹取物語』。
その冒頭で、竹取の翁が光り輝く竹の中から小さな姫を見つける場面は、物語全体の象徴として多くの人々の記憶に残っていますよね。
でも、なぜ「竹」なのか、なぜ「たけのこ」のように竹の中から赤子が現れるのか、そしてその竹が物語の中でどんな意味を持っているのか、詳しく知っている方は意外と少ないかもしれません。
この記事では、かぐや姫の物語における「たけのこ(竹)」の役割と象徴性、歴史的な背景、そして現代にまで続く文化的な意味について、詳しく解説していきます。
古典文学の名作に秘められた竹の謎を、一緒に紐解いていきましょう。
結論:竹はかぐや姫を生み、富をもたらす神聖な象徴

かぐや姫の物語における「たけのこ(竹)」は、天上界から地上へ姫を送り届ける神聖な通路であり、同時に富と幸運をもたらす霊力の象徴です。
物語の冒頭で、竹取の翁が光り輝く竹を切ると、中からたけのこ状の小さな赤子(かぐや姫)が現れます。
これは単なる誕生の描写ではなく、異界(月の都)からこの世界への境界を開く装置として竹が機能していることを示しています。
さらに、姫が成長するにつれて、翁が竹を取るたびに黄金や財宝が竹の中から現れるようになり、一家は裕福になっていきます。
このように、竹は物語の始まりであり、登場人物たちの運命を大きく変える存在として描かれているのです。
なぜ竹がかぐや姫誕生の舞台として選ばれたのか

竹取物語の基本構造と竹の位置づけ
『竹取物語』は平安時代前期に成立したとされる日本最古の物語文学です。
9世紀後半から10世紀初頭にかけて、作者不詳のまま生み出されたこの作品は、『古今和歌集』成立以前の古い時代の文学として位置づけられています。
別称として「竹取の翁」「かぐや姫の物語」「竹取翁物語」などがあり、近代以降は「かぐや姫」の題名で絵本、アニメ、映画などさまざまなメディアで受容されてきました。
『源氏物語』の中でも「物語の出で来はじめの親なる竹取の翁」と言及されており、後代の物語文学の原点として高く評価されています。
物語の冒頭における竹の役割
物語は竹取の翁が竹を伐ることを生業としている場面から始まります。
ある日、翁が山で黄金色に光り輝く竹を見つけ、不思議に思って切ってみると、中から光り輝く小さな女の子が現れます。
子どものいなかった翁夫婦は、これを「天から授かった子」と喜び、大切に育てることにしました。
この場面で竹は以下のような機能を果たしています。
- 天上界と地上界をつなぐ通路として
- 神聖な存在を守り育てる容れ物として
- 超自然的な出来事を自然に導入する装置として
竹の中から赤子が現れるという設定は、まるでたけのこが地面から顔を出すように、新しい生命が竹という神聖な植物を通して現れることを象徴しているのですね。
富と幸運をもたらす竹の霊力
かぐや姫が成長していくにつれて、翁が竹を取るたびに黄金や財宝が竹の中から出てくるようになります。
この描写は、竹が単に姫を生んだだけでなく、継続的に富と幸運をもたらす霊力を持った植物として描かれていることを示しています。
翁は元々貧しい竹取りでしたが、かぐや姫を授かってからは裕福になり、姫を立派に育てることができるようになりました。
このように、竹は物語全体を通じて「豊穣」「繁栄」「幸運」の象徴として機能しているのです。
民俗学的な竹の象徴性
『竹取物語』が「作り物語」、つまり事実に基づかないフィクション小説の代表とされる一方で、古い伝承をまとめたものである点は多くの研究で認められています。
日本各地の民俗や伝説において、竹は以下のような意味を持つ植物とされてきました。
- 天上界・異界との境界を開く植物
- 豊穣・子授け・長寿を象徴する植物
- 神聖な力を宿す霊木
「竹から子どもが生まれる」というモチーフは、かぐや姫の物語だけでなく、他の昔話にも見られる普遍的なテーマなんですね。
これは竹が持つ、まっすぐに伸びる成長力や、地下茎でつながり増殖する生命力が、古来より神秘的な力として認識されていたことを示しています。
かぐや姫を生んだ竹の種類
興味深いことに、近年の民俗学や植物学の研究では、かぐや姫を生んだ竹は孟宗竹(モウソウチク)ではないとされています。
その理由は、孟宗竹が17世紀から18世紀にかけて中国から伝来したとされており、平安時代以前の日本には存在しなかったためです。
したがって、物語の竹は在来種のマダケ(真竹)かハチク(淡竹)であると推定されています。
このような細かい考証からも、かぐや姫の物語が日本の風土と密接に結びついた作品であることがわかりますね。
物語における竹の具体的な描写と役割
竹からの誕生シーン
物語の最も重要な場面の一つが、竹取の翁がかぐや姫を発見するシーンです。
この場面は現代のあらゆる翻案作品でも必ず描かれる核心的な場面となっています。
翁が山で竹を取っていると、一本の竹が根元から光り輝いているのを見つけます。
不思議に思って近づいて切ってみると、竹の節の中に三寸(約9センチ)ほどの小さな女の子が座っているのを発見するのです。
この「たけのこ状の赤子」という表現は、まさに竹の子(たけのこ)のように竹から生まれた子という意味を込めているのですね。
富をもたらす竹の連続的な描写
かぐや姫を家に連れ帰った後、翁は相変わらず竹を取る仕事を続けます。
すると、竹を取るたびに竹の節ごとに黄金が詰まっていることを発見するようになります。
この不思議な現象により、翁は次第に富裕になり、かぐや姫を貴族のように立派に育てることができるようになりました。
三ヶ月ほどでかぐや姫は成人女性へと成長し、その美しさは国中に知れ渡ります。
五人の貴公子が求婚に訪れ、さらには帝(天皇)までもが姫に恋をするという展開になっていきます。
物語のクライマックスと竹の不在
興味深いことに、物語の後半、かぐや姫が月に帰る場面では、竹はほとんど登場しません。
満月の十五夜、かぐや姫は自分が月の都の住人であり、罪を犯して地上に降ろされていたが、今夜月に帰らねばならないと告白します。
天人たちが迎えに来て、かぐや姫は翁夫婦や帝への別れを惜しみながらも月へ昇っていきます。
形見として残された「不死の薬」と手紙は、帝によって駿河国の日本で最も高い山の頂で焼かれます。
この「天に最も近い山で焼いた」というモチーフは、後世に富士山伝説(不死=富士)と結びついて語られるようになりました。
SNSや文化における「かぐや姫の物語とたけのこ」への反応
スタジオジブリ作品での竹の描写
2013年に公開されたスタジオジブリの『かぐや姫の物語』では、竹から生まれるシーンが美しいアニメーションで表現されました。
高畑勲監督は、竹林の中で光る竹を見つけた翁が、竹を割ると中から小さな姫が現れる場面を、水彩画のようなタッチで描いています。
この作品を観た多くの人々がSNSで「竹から生まれる場面が神秘的で美しかった」「たけのこのように姫が現れる場面が印象的」といった感想を共有しています。
ジブリ作品を通じて、改めて竹という植物の神聖さや物語における重要性が多くの人に認識されるようになりました。
地域振興と「かぐや姫のふるさと」
奈良県広陵町や京都府向日市など、全国各地が「かぐや姫のふるさと」を名乗り、地域振興や観光資源として竹とかぐや姫伝説を活用しています。
広陵町では、古代葛城地域の「迦具夜比売(かぐやひめ)」伝承を背景に、自地域をモデル候補として推しています。
向日市も「竹林の美しいまち」を舞台とする物語とのイメージで「かぐや姫のまちづくり」を積極的に進めています。
これらの地域では、竹林の保全や竹を使った伝統工芸の振興、かぐや姫をテーマにしたイベントなどが開催され、地域のアイデンティティとして「竹とかぐや姫」が定着しています。
教育現場での竹取物語の扱い
学校教育の場でも、『竹取物語』は古典文学の入門として広く教えられています。
特に「竹から生まれる」という冒頭部分は、古文の導入として生徒たちの興味を引く効果的な教材となっています。
「今は昔、竹取の翁といふものありけり」という有名な書き出しとともに、光る竹の中から姫が現れる場面は、多くの日本人が最初に触れる古典文学の名場面として記憶されています。
教育関係者からは「竹という身近な植物を通じて、異界との交流という非日常的なテーマを理解しやすくなる」という評価も聞かれます。
富士山世界遺産と竹取物語の関連
富士山が世界遺産に登録される際、その文化的価値を説明する資料の中で『竹取物語』が言及されています。
物語の結末で、かぐや姫が残した「不死の薬」を燃やした山が富士山であるという伝承が紹介されているのです。
「不死」が「富士」の語源になったという説もあり、かぐや姫の物語と富士山信仰の結びつきが解説されています。
竹から始まり富士山で終わる物語の構造は、日本の自然や地理と深く結びついた文学作品であることを示していますね。
現代アートやイベントでの表現
近年では、竹をテーマにした現代アートの展示や、竹林でのライトアップイベントなどで、かぐや姫の物語をモチーフにした作品が数多く制作されています。
京都の嵐山や鎌倉の報国寺など、美しい竹林で知られる観光地では、夜間に竹林をライトアップし、かぐや姫の世界観を再現するイベントが人気を集めています。
SNSでは「光る竹林を見てかぐや姫の気持ちがわかった気がする」「竹の神秘性を実感した」といった投稿が見られます。
まとめ:竹は物語の核心であり日本文化の象徴
かぐや姫の物語における「たけのこ(竹)」は、単なる背景や小道具ではありません。
天上界から地上へ姫を送り届ける神聖な通路であり、富と幸運をもたらす霊力の象徴として、物語全体の構造を支える重要な要素なのです。
竹から誕生するという設定は、異界出自の主人公が急速に成長するという超自然的な展開を自然に導入する装置として機能し、その後の説話文学や異類婚姻譚の典型パターンを形作る役割を果たしました。
平安時代前期に成立した『竹取物語』は、日本最古の物語文学として、仮名文による創作文学の原点でもあります。
『源氏物語』でも「物語の出で来はじめの親」と評価され、後代の文学に大きな影響を与えました。
現代においても、スタジオジブリのアニメーション、地域振興、教育現場、観光資源など、さまざまな形でかぐや姫と竹の物語は生き続けています。
竹という植物が持つ、まっすぐに伸びる成長力、神秘的な美しさ、そして日本の風土に根ざした文化的背景が、1000年以上経った今でも人々を魅了し続けているのですね。
あなたも竹取物語の世界を体験してみませんか
かぐや姫の物語における竹の意味を知ると、この古典文学がより深く、より豊かに感じられるはずです。
もし機会があれば、実際に竹林を訪れて、静かに揺れる竹の音を聞いてみてください。
京都の嵐山、鎌倉の報国寺、奈良の広陵町など、かぐや姫ゆかりの地を訪ねてみるのもおすすめです。
あるいは、古典の原文や現代語訳を手に取って、改めて『竹取物語』を読み直してみるのもいいでしょう。
竹から生まれた姫が月へ帰っていく、この美しくも切ない物語は、時代を超えて私たちに何かを語りかけてくれます。
ぜひあなた自身の感性で、かぐや姫と竹の物語を味わってみてください。
きっと新しい発見や感動が待っているはずですよ。