
スタジオジブリの『かぐや姫の物語』を観て、その独特な絵のタッチに心を奪われた方も多いのではないでしょうか。
水彩画のような柔らかさと力強さが同居する映像美は、一体誰がどのように生み出したのか気になりますよね。
この作品の原画には、高畑勲監督が絶大な信頼を寄せたトップクラスのアニメーターたちが参加しています。
約8年もの歳月をかけて制作されたこの作品の原画について、担当者や制作背景、重要シーンごとの原画家まで、詳しくご紹介していきます。
かぐや姫の物語の原画を描いた主要メンバー

『かぐや姫の物語』の原画は、田辺修を中心に橋本晋治、濱田高行、安藤雅司、山口明子など、日本のアニメ界を代表する一流アニメーターたちが担当しました。
作画監督・原画設計を務めた田辺修は、高畑監督から絶大な信頼を得ており、作品全体の作画設計を担当しています。
また、橋本晋治は多くの重要シーンの原画を手がけ、特にクライマックスの感動的な場面を生み出しました。
この作品は2013年に公開されたスタジオジブリ作品で、制作期間は約8年、総制作費は約51億円という大規模なプロジェクトでした。
なぜこれほど多くの一流スタッフが集まったのか

高畑勲監督の強いこだわりと信頼関係
高畑勲監督は『かぐや姫の物語』に対して並々ならぬ情熱を注いでいました。
実は監督は新人時代から「竹取物語」をアニメ化したいという思いを持ち続けており、この作品はその集大成となりました。
そのため、高畑監督は長年一緒に仕事をしてきた信頼できるアニメーターたちを招集したのです。
特に田辺修との関係は深く、作画監督として作品全体のビジュアルデザインを任せるほどの信頼を寄せていました。
独特の画風を実現するための高度な技術
『かぐや姫の物語』の最大の特徴は、まるで絵巻物のような独特の画風にあります。
線画のタッチを活かした水彩画風の表現は、従来のアニメーション技法とは大きく異なるものでした。
この表現を実現するには、高度な作画技術と経験が必要だったため、実力のあるベテランアニメーターが多数参加することになったのです。
作画監督補佐を務めた小西賢一は『崖の上のポニョ』などでも活躍した実力者で、繊細な表現を支えました。
8年という長期制作を支えたチーム体制
約8年という長期にわたる制作期間を乗り切るには、強固なチーム体制が不可欠でした。
高畑監督の緻密な演出のもと、多数のアニメーターが役割分担しながら原画を制作していきました。
絵コンテ補佐には佐藤雅子、笹木信作、橋本晋治が参加し、特任シーン設計には百瀬義行が携わるなど、専門性の高いスタッフが適材適所で配置されていました。
このような体制があったからこそ、長期プロジェクトでも高いクオリティを維持できたのですね。
重要シーンを担当した原画家たち
橋本晋治が手がけた印象的なシーン
橋本晋治は『かぐや姫の物語』の中でも、特に印象的な複数のキーシーンを担当しました。
具体的には以下のようなシーンです。
- 都大路疾走・山斜面転落シーン - かぐや姫が激しい感情を抑えきれず走り出す、作品屈指の名シーン
- 庭破壊シーン - 姫の内面の葛藤が爆発する重要な場面
- スカイ・ランデヴー - 捨丸との再会シーン
- 最後の別れ - 物語のクライマックスとなる感動的な場面
これらのシーンは作品の中でも特に観る者の心を揺さぶる場面で、橋本晋治の確かな技術が光っています。
2025年6月に開催された「高畑勲展」(麻布台ヒルズ)では、橋本晋治の原画や桜舞うシーンの設計図が展示され、多くのファンが訪れました。
佐々木美和が描いた愛らしい姫の表情
佐々木美和は、かぐや姫の繊細で愛らしい表情を多く担当したアニメーターです。
冒頭の翁と童女のシーン、姫の欠伸や屈伸といった日常的な仕草を丁寧に描きました。
また、物語の最後、羽衣を羽織り月へ帰るシーンも担当しており、川名久美子、佐藤雅子と共に美しい別れの場面を生み出しました。
これらの細やかな表情の変化が、かぐや姫というキャラクターに命を吹き込んでいるのです。
安藤雅司と山口明子による子供時代のシーン
安藤雅司と山口明子は、かぐや姫と捨丸の瓜拾い・食べるシーンなど、子供時代の楽しい場面を担当しました。
安藤雅司は『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』の作画監督としても知られる実力者です。
山口明子も長年ジブリ作品に携わってきたベテランアニメーターで、子供たちの自然な動きや表情を見事に表現しています。
このシーンは物語の中でも特にのびのびとした子供らしさが感じられる印象的な場面となっています。
濱田高行と西垣庄子による温かな家族のシーン
濱田高行と西垣庄子は、媼のほっぺを挟む姫のシーンなど、家族の温かさが感じられる場面を担当しました。
このシーンは、育ての親である媼とかぐや姫の深い絆を表現する重要な場面です。
細やかな仕草や表情の変化を通じて、言葉にならない愛情を視覚的に伝えています。
こうした日常的なシーンの積み重ねが、物語全体に深みを与えているのですね。
西田達三と田村篤による幻想的なクライマックス
物語のクライマックス、月の人々の飛来や飛天の舞といった幻想的なシーンは、西田達三と田村篤が担当しました。
このシーンは作品の中でも特に独特な美しさを持つ場面で、この世のものとは思えない神秘的な雰囲気を見事に表現しています。
カメラ動きに合わせた背景技法も注目され、展覧会でもその設計図が公開されて話題となりました。
原画の魅力を伝える展覧会や資料
『ジ・アート・オブ かぐや姫の物語』
『かぐや姫の物語』の原画について詳しく知りたい方には、『ジ・アート・オブ かぐや姫の物語』というアートブックがおすすめです。
この本には、作品の原画や設定資料が豊富に掲載されており、制作過程を詳しく知ることができます。
どのアニメーターがどのシーンを担当したのか、どのような試行錯誤があったのかなど、制作の裏側を深く理解できる貴重な資料となっています。
各地で開催される高畑勲展
2023年には静岡市美術館で「高畑勲展」が開催され、橋本晋治の原画が公開されました。
さらに2025年6月には麻布台ヒルズで「高畑勲展」が開催され、橋本晋治の原画や桜舞うシーンの設計図が展示されました。
これらの展覧会では、実際の原画を間近で見ることができ、線の一本一本に込められた作画家の技術と情熱を感じられます。
カメラ動きに合わせた背景技法なども紹介され、アニメーション制作の奥深さを体験できる貴重な機会となっていますね。
絵コンテ全集で見る田辺修の仕事
トクマから刊行された絵コンテ全集では、田辺修の原画参加が確認できます。
絵コンテは映画の設計図のようなもので、どのようなカット割りで物語が進むのかを示すものです。
田辺修が作画監督・原画設計としてどのように作品全体をデザインしたのか、その仕事ぶりを詳しく知ることができます。
アニメーション制作に興味がある方にとっては、プロの仕事を学べる貴重な資料と言えるでしょう。
SNSやファンの反応
原画の繊細さに感動する声
SNSでは『かぐや姫の物語』の原画について、多くのファンが感動を語っています。
「展覧会で原画を見て、線の繊細さに驚いた」という声や、「一枚一枚が美術作品のようだった」という感想が多く見られます。
特に橋本晋治が担当した疾走シーンの原画については、「あの激しい動きをどうやって描いたのか不思議」「何度見ても圧倒される」といった驚きの声が上がっています。
アニメーターへの尊敬の念
「こんなに多くの一流アニメーターが参加していたなんて知らなかった」という発見の声も多くあります。
安藤雅司や橋本晋治といった名前を知って、改めて作品を見直したというファンも少なくありません。
「一つの作品にこれだけの才能が集まるのがジブリのすごさ」「高畑監督の人脈と信頼関係の賜物」といった、制作チームへの尊敬の念を示すコメントも見られます。
独特の画風への評価
『かぐや姫の物語』の独特な画風については、公開当初から賛否両論がありました。
しかし、原画を実際に見たり、制作過程を知ったりすることで、「この画風の意味がようやく理解できた」という声も多くあります。
「水彩画のような柔らかさと、線画の力強さが同居していて美しい」「日本の伝統的な絵巻物を現代に蘇らせた傑作」といった高評価が目立ちます。
時間が経つにつれて、この作品の芸術的価値が再評価されている傾向にありますね。
まとめ
『かぐや姫の物語』の原画は、田辺修、橋本晋治、安藤雅司、山口明子、濱田高行、西垣庄子など、日本を代表する一流アニメーターたちによって制作されました。
作画監督・原画設計を務めた田辺修を中心に、各シーンごとに最適なアニメーターが配置され、約8年という長期にわたる制作期間を経て完成しました。
橋本晋治は都大路疾走シーンなど印象的なキーシーンを多数担当し、佐々木美和は姫の繊細な表情を、安藤雅司と山口明子は子供時代の楽しい場面を描いています。
高畑勲監督が新人時代から温め続けた「竹取物語」への思いが、信頼する仲間たちとの協働によって結実したのが、この作品なのです。
総制作費約51億円をかけた大規模プロジェクトで、その原画は現在も各地の展覧会で公開され、多くの人々を魅了し続けています。
原画の魅力をもっと深く味わってみませんか
『かぐや姫の物語』の原画について知ることで、作品への理解がさらに深まったのではないでしょうか。
もし機会があれば、ぜひ『ジ・アート・オブ かぐや姫の物語』を手に取ってみてください。
また、各地で開催される「高畑勲展」では実際の原画を間近で見ることができ、アニメーターたちの技術と情熱を直接感じられます。
原画を知った上で作品を見直すと、一つ一つのシーンがどれほどの手間と愛情をかけて作られたのかが実感できますよ。
高畑勲監督と一流アニメーターたちが生み出した、この奇跡のような作品の魅力を、あなたもぜひもう一度味わってみてくださいね。