かぐや姫の物語の田辺修って誰?

かぐや姫の物語の田辺修って誰?

スタジオジブリの名作『かぐや姫の物語』を語る上で欠かせない人物、田辺修さん。

映画のエンドロールで「人物造形・作画設計」という聞き慣れないクレジットを見て、一体どんな役割を果たしたのか気になった方も多いのではないでしょうか。

実は田辺修さんは、かぐや姫たちのキャラクターデザインから動きの設計まで担当した、この作品の映像表現を根幹から支えた重要人物なんですね。

高畑勲監督が8年もの歳月をかけて作り上げた水彩画のような美しいアニメーションの裏には、田辺さんの並々ならぬこだわりと技術がありました。

この記事では、田辺修さんが『かぐや姫の物語』でどんな役割を果たし、作品にどのような影響を与えたのかを詳しくご紹介します。

田辺修は『かぐや姫の物語』の人物造形を担当したアニメーター

田辺修は『かぐや姫の物語』の人物造形を担当したアニメーター

田辺修さんは、『かぐや姫の物語』において「人物造形・作画設計」を担当した日本のアニメーター・キャラクターデザイナーです。

簡単に言えば、かぐや姫をはじめとする登場人物たちのビジュアルをデザインし、それをどう動かすかという設計図を作った人物ですね。

スタジオジブリ作品を中心に活躍してきたベテランで、高畑勲監督からは「実感のあるキャラクター」を描いてほしいという依頼を受けていました。

つまり、観客が本当にそこに人間が生きているように感じられる、リアリティ重視の人物表現を求められていたということです。

制作現場では、田辺さんが描きたいと思えるかどうかが企画の成否を左右するほど、高畑監督からの厚い信頼を得ていた存在でした。

なぜ田辺修は『かぐや姫の物語』で重要な役割だったのか

なぜ田辺修は『かぐや姫の物語』で重要な役割だったのか

高畑勲監督が求めた「実感のあるキャラクター」

高畑勲監督が田辺修さんに求めたのは、単なる「かわいいキャラクター」ではありませんでした。

『かぐや姫の物語』は日本最古の物語文学『竹取物語』に隠された、人間・かぐや姫の真実の物語を描く作品です。

そのため、生きている人間の体温や重さ、感情の揺れ動きまで感じられるキャラクターが必要だったんですね。

田辺さんは、線の「揺らぎ」や「崩し」を使いながらも、生身の人間のリアルな動きを追求する作画スタイルを持っていました。

この技術が、高畑監督の求める方向性と完璧にマッチしたのです。

美術との対比で生まれた独特の世界観

興味深いのは、田辺修さんへの要求と、美術監督の男鹿和雄さんへの要求が対照的だったことです。

田辺さんには「実感のあるキャラクター」を求める一方で、男鹿さんには余白を残した「抜いた絵」を依頼していました。

つまり、キャラクターは濃密にリアルに、背景はシンプルで呼吸するようにという組み合わせですね。

この対比が、あの独特な水彩画風のアニメーション表現を生み出したのです。

田辺さんの描く実感あふれる人物たちが、日本画風の美しい背景の中で生き生きと動く——この絶妙なバランスが作品の魅力となりました。

企画の方向性を左右するほどの影響力

制作現場では、田辺修さんの関わり方が企画そのものの成否に影響するレベルだったとされています。

実際、『かぐや姫の物語』の企画段階では、田辺さんが描きたいと思えるかどうかで企画が二転三転したという記録があります。

高畑監督は別企画「子守唄の誕生」で約1年半も研究を続けており、その中で田辺さんも絵を描いていましたが、企画はまとまりませんでした。

同時期に『かぐや姫』も選択肢の一つとして存在しており、田辺さんがどう関わるかが最終的な企画選択に影響したことがうかがえます。

これは、高畑監督がいかに田辺さんの技術と感性を信頼していたかの証明ですね。

制作期間8年、総製作費50億円の中核を担う

『かぐや姫の物語』は、制作期間約8年、総製作費50億円ともいわれる大規模プロジェクトでした。

その人物造形の中核を田辺修さんが担ったということは、作品全体の映像表現の基盤を作ったということです。

高畑演出・田辺の人物造形・男鹿の美術という布陣は、写実的な感情と日本画風の絵画性を両立させるための最強チームだったんですね。

この三者の協力によって、アニメーション史に残る傑作が誕生したのです。

田辺修の仕事が光る『かぐや姫の物語』の具体的なシーン

子ども時代のかぐや姫の泥くさい動き

田辺修さんの技術が最も発揮されたのは、竹林で育つ子ども時代のかぐや姫の描写でしょう。

都会の姫君になる前の「たけのこ」と呼ばれていた頃、かぐや姫は野山を駆け回り、泥だらけになって遊んでいました。

この時期の動きは、理想化されたアニメキャラクターではなく、本物の子どもの無邪気で粗野な動きとして描かれています。

転んだり、笑ったり、泣いたりする表情や身体の動きに、実際の子どもが持つ生命力が宿っているんですね。

これこそが高畑監督が求めた「実感のあるキャラクター」の具体例です。

都に出てからの抑圧された所作

対照的に印象的なのが、都に出てからのかぐや姫の動きです。

姫としての教育を受け、貴族社会のルールに縛られていくにつれて、かぐや姫の動きは次第に制限されていきます。

歩き方、座り方、手の置き方——すべてが作法に則った「美しい」動きになっていくのですが、その中に抑圧された心情が滲み出ているんですね。

同じキャラクターの動きが、生き方の変化によってこれほど変わるという表現は、田辺さんの設計があってこそ実現できたものです。

身体の動き・表情に生き方の変化が刻まれるという、まさに「実感のあるキャラクター」の真骨頂といえるでしょう。

感情が爆発する「走るかぐや姫」

作品のクライマックス近くで描かれる、かぐや姫が都から逃げ出して走るシーン。

このシーンは映画を観た多くの人の記憶に残る、圧倒的な迫力を持った場面です。

抑圧されていた感情が一気に爆発し、髪を振り乱して山道を駆け下りるかぐや姫の姿は、生身の人間の感情の激しさそのものを表現しています。

線が荒々しく動き、背景も激しく流れる中、それでもかぐや姫という「人間」の実在感は失われていません。

むしろ、崩れた絵の中にこそ、人間の本質的な感情が描かれているんですね。

この表現は、田辺修さんが設計した「リアルな人間の芝居」の集大成といえるでしょう。

SNSでも話題になった作画の魅力

『かぐや姫の物語』の作画については、公開当時からSNSでも大きな反響がありました。

「まるで絵本が動いているよう」「水彩画のタッチなのに、キャラクターがこんなに生き生きしているなんて」という驚きの声が多数上がっています。

また、「走るシーンの作画が凄すぎて息ができなかった」「感情の爆発が絵から伝わってきた」など、田辺さんの仕事の成果を讃える意見も多く見られますね。

アニメーションファンの間では、田辺修さんの人物造形があってこその『かぐや姫の物語』という評価が定着しています。

田辺修と高畑勲監督の信頼関係

『ホーホケキョ となりの山田くん』からの関係

田辺修さんと高畑勲監督の関係は、『かぐや姫の物語』が初めてというわけではありません。

以前から高畑監督は田辺さんを強く信頼しており、『ホーホケキョ となりの山田くん』などでも重要な役割を担ってきました。

『山田くん』も独特の絵柄で、水彩画のような柔らかいタッチが特徴的な作品でしたね。

この作品での経験が、『かぐや姫の物語』での更なる挑戦につながったと考えられます。

高畑監督にとって田辺さんは、自分の映像表現を実現してくれる最も信頼できるパートナーだったのです。

企画段階から参加する特別な存在

通常のアニメ制作では、企画が決まってからキャラクターデザイナーが参加することが多いです。

しかし田辺修さんの場合、企画段階から高畑監督と一緒に作品を作り上げていく特別な立場にありました。

「田辺が描きたいか否かで企画が二転三転した」という記録からも、その関係性の深さがわかりますね。

これは単なる「発注者と受注者」の関係ではなく、共に作品を創造する芸術家同士の関係だったということです。

「実感のあるキャラクター」という共通の目標

田辺さんと高畑監督を結びつけていたのは、「実感のあるキャラクター」を追求するという共通の目標でした。

高畑監督は常に、アニメーションであっても嘘のないリアルな人間を描きたいという願いを持っていました。

一方の田辺さんは、線の揺らぎや崩しを使いながらも、生身の人間の重さ・体温を感じさせる作画技術を持っていました。

この二人の目指す方向性が完全に一致していたからこそ、8年という長期間の制作を共に乗り越えられたのでしょう。

まとめ:田辺修は『かぐや姫の物語』に命を吹き込んだ職人

田辺修さんは、『かぐや姫の物語』において「人物造形・作画設計」を担当したアニメーター・キャラクターデザイナーです。

高畑勲監督から「実感のあるキャラクター」を描くことを求められ、観客が本当にそこに人間が生きているように感じられるリアリティ重視の人物表現を実現しました。

子ども時代の泥くさい動き、都に出てからの抑圧された所作、感情が爆発する走るシーンなど、生き方の変化が身体の動き・表情に刻まれる描写は田辺さんの技術があってこそです。

制作現場では、田辺さんが描きたいと思えるかどうかが企画の成否を左右するほど、高畑監督からの厚い信頼を得ていました。

8年の制作期間、総製作費50億円という大規模プロジェクトの人物造形の中核を担い、アニメーション史に残る傑作を生み出した田辺修さん。

その仕事は、まさに『かぐや姫の物語』に命を吹き込んだ職人技といえるでしょう。

『かぐや姫の物語』を改めて観てみませんか

田辺修さんの仕事を知った今、『かぐや姫の物語』をもう一度観てみると、新たな発見があるはずです。

かぐや姫の表情の変化、身体の動き、抑圧された感情が爆発する瞬間——すべてに田辺さんの技術と魂が込められています。

水彩画のような美しい映像の中で、生身の人間のように生き生きと動くキャラクターたち。

その一つひとつの動きに、どれだけの思いと技術が込められているか、ぜひ感じてみてください。

きっと、映画を観る目が変わり、アニメーションという芸術の奥深さに感動するはずですよ。

田辺修さんという職人が命を吹き込んだ『かぐや姫の物語』、その魅力をたっぷりと味わってくださいね。

キーワード: かぐや姫の物語 田辺修