
『かぐや姫の物語』について調べていると、「これって本当にジブリ映画なの?」「高畑勲監督はどんな想いでこの作品を作ったの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
2013年に公開されたこの作品は、他のジブリ作品とは一線を画す独特の雰囲気と深いテーマ性で、観る人に強烈な印象を残します。
この記事では、『かぐや姫の物語』がジブリ映画であることの確認から、高畑勲監督が8年の歳月をかけて込めた想い、作品に隠された「罪と罰」のテーマまで、詳しく解説していきますね。
『かぐや姫の物語』はスタジオジブリ制作の高畑勲監督作品です

『かぐや姫の物語』は、2013年に公開されたスタジオジブリのアニメーション映画で、高畑勲監督が手がけた最後の長編作品です。
日本最古の物語文学『竹取物語』を原作としながらも、かぐや姫の心情を深く掘り下げた異色のジブリ映画として知られています。
制作期間は企画開始から8年、総製作費は50億円を超え、色鉛筆風の素描という独特の映像表現で描かれた、高畑勲監督の美学が極まった作品と言えるでしょう。
なぜ『かぐや姫の物語』は他のジブリ映画と違うのか

高畑勲監督のキャリア集大成としての位置づけ
高畑勲監督にとって、『かぐや姫の物語』は特別な意味を持つ作品でした。
実はこの企画、監督のキャリア初期である約55年前、東映動画時代にまで遡るのです。
内田吐夢監督招聘時の企画案に関わったことから始まり、長年にわたって原作『竹取物語』の謎解きを模索し続けてきました。
公開前の1年半だけで5000時間を費やしたというエピソードからも、監督のこの作品への並々ならぬ情熱が伝わってきますよね。
従来のアニメーションを超える革新的な表現技法
『かぐや姫の物語』の最も特徴的な点は、その映像表現にあります。
色鉛筆風の素描技法を用いることで、従来のセルアニメとは全く異なる質感を実現しました。
白い空間に動きで実在感を生み出す技法や、詳細な衣食住の描写は、高畑監督が追求した「リアリズム」の極致と言えるでしょう。
中間的な演技表現を追求し、アニメでありながら実写映画のような深みのある人物描写を実現しています。
『竹取物語』の大胆な再解釈と改変
高畑監督は原作をそのまま映像化するのではなく、弁証法的に検証し、独自の解釈を加えました。
原作では曖昧だったかぐや姫の心情を明確にし、姫の視点から人間界の喜びと苦しみを描いています。
山村での暮らしや都での教育といったオリジナル設定を加え、月世界の住人が姫を「罪の償い」のために地上に下ろしたという構造を強調しました。
現代に竹取物語が必要かという問いに対する、監督なりの答えがこの作品なのです。
製作費50億円超という異例の規模
総製作費50億円超(一部では52億円とされています)という数字は、アニメ映画としては驚異的な規模です。
8年という長い制作期間も含めて、ジブリが本気でこの作品に挑んだ証と言えるでしょう。
しかしこの規模の投資は、興行的には苦戦を強いられる結果となりました。
それでも制作を続けたのは、高畑監督とスタジオジブリの芸術性への強いこだわりがあったからですね。
「罪と罰」というテーマが示す深いメッセージ
かぐや姫が犯した「罪」とは何か
『かぐや姫の物語』のキャッチコピーは「姫の犯した罪と罰」です。
原作でも姫は「昔の契り」で地上に来た罪を償うとされていますが、高畑版ではより明確な解釈を提示しています。
人間的な感情や欲望を持つこと自体が罪という位置づけなのです。
月世界の清浄さに対し、地上の「穢れ」を肯定する姫の葛藤が、作品全体を通して描かれています。
これは現代を生きる私たちにも通じる、普遍的なテーマと言えるでしょう。
人間であることの痛みと喜び
かぐや姫は自分の心に従う「本当の自分」を求め続けます。
他者の価値観に縛られず生きようとする姿は、現代人の自己実現の物語とも重なりますね。
しかし作品は、誰一人幸福にならない悲劇として描かれます。
「ハイジ」のような明るい物語ではなく、社会的・現実的な絶望を詩情豊かに表現しているのです。
人間として生きることの痛みと、それでも諦めきれない現世への執着が、観る者の心に深く響きます。
月世界と地上世界の対比が意味するもの
月世界は清浄で完璧な世界として描かれますが、そこには感情がありません。
対して地上は穢れていて不完全ですが、喜びや悲しみといった人間らしい感情に満ちています。
高畑監督は、この対比を通して「不完全であることの価値」を問いかけているのです。
完璧だけれど感情のない世界と、不完全だけれど生き生きとした世界、あなたならどちらを選びますか?
宗教性と哲学性の深い層
作品には宗教性も指摘されており、信仰による救済の改変も含まれているとされています。
単なるエンターテインメントではなく、深いメッセージ性を持つ作品として、世界的に高い評価を受けました。
高畑監督は「本物である責任」を持つ作品を作ることにこだわり続け、それがこの作品の哲学的深みにつながっているのです。
作品への評価と反応:興行と芸術性の狭間で
興行的には苦戦も世界的には高評価
『かぐや姫の物語』は、ジブリ作品としては異例の興行的苦戦を強いられました。
50億円を超える製作費を回収するには至らず、商業的には成功とは言えない結果となったのです。
しかし世界的には非常に高い評価を受け、高畑勲監督の美学の極致として認識されています。
芸術性と商業性のバランスは難しいですが、この作品は明確に前者を選んだ結果と言えるでしょう。
SNSやファンの間での評価
SNSでは「泣いた」「心が痛い」「何度も見たくなる」という声が多く見られます。
特に大人になってから観ると、かぐや姫の葛藤がより深く理解できるという意見も多いですね。
「子供の頃は理解できなかったけれど、今見ると涙が止まらない」といった、年齢を重ねることで理解が深まる作品としても知られています。
ファンの間では、宮崎駿監督作品とは異なる、高畑勲監督ならではの繊細さと厳しさが愛されているのです。
高畑勲監督逝去後の再評価
高畑勲監督は2018年に82歳で逝去されました。
監督の死後、『かぐや姫の物語』は改めて注目され、研究や論考が続いています。
2026年現在も、キャッチコピー「姫の犯した罪と罰」が原作テーマを象徴するものとして再評価されているのです。
監督の遺作として、その価値はより高まり続けていると言えるでしょう。
宮崎駿監督との対比で見る高畑作品の特徴
ジブリの二大巨匠、宮崎駿と高畑勲は、それぞれ異なる作風で知られています。
宮崎作品が冒険とファンタジーに満ちているのに対し、高畑作品は日常と現実の厳しさを描きます。
ジブリ内では、高畑作品は「本物である責任」を持つと評されているのです。
どちらが優れているというわけではなく、二人の監督の違いがあるからこそ、ジブリの作品群は豊かなのですね。
『かぐや姫の物語』をより深く理解するためのポイント
原作『竹取物語』との比較
『かぐや姫の物語』をより楽しむには、原作『竹取物語』を知っておくと良いでしょう。
原作は平安時代初期に成立した日本最古の物語文学で、非常に短い物語です。
高畑監督がどの部分を膨らませ、どこにオリジナル要素を加えたのかを比較すると、監督の意図が見えてきます。
特に姫の心情描写は、原作にはほとんどなく、ほぼ全てが高畑監督の解釈によるものなのです。
劇中の象徴的なシーン
山村での自由な暮らしから、都での窮屈な生活への変化は、作品の重要なターニングポイントです。
特に「走る」シーンは、かぐや姫の感情が爆発する印象的な場面として知られています。
色鉛筆風の描線が荒々しく変化し、姫の内面の混乱を視覚的に表現しているのです。
このシーンだけでも、高畑監督の演出力の高さが伝わってきますね。
音楽と声優の演技
主題歌「いのちの記憶」は、作品のテーマを歌詞で表現した名曲です。
声優陣も、朝倉あきをはじめとする実力派が集まり、繊細な演技を披露しています。
高畑監督が求めた「中間的な演技」は、声優の演技にも反映されており、アニメらしい大げさな表現を避けた自然な会話が特徴的です。
音楽と声が一体となって、作品の世界観を支えているのです。
映像表現の技術的な革新
色鉛筆風の素描という技法は、デジタル時代だからこそ実現できた表現です。
手描きの温かみとデジタルの正確さを融合させ、新しいアニメーション表現を生み出しました。
背景の余白、線の強弱、色彩の淡さなど、全てが計算された美しさなのです。
この技法は後のアニメ作品にも影響を与えたと言われています。
まとめ:『かぐや姫の物語』は高畑勲監督が8年かけて完成させたジブリの異色作
『かぐや姫の物語』は、2013年公開のスタジオジブリ映画で、高畑勲監督の最後の長編作品です。
日本最古の物語『竹取物語』を原作としながら、かぐや姫の心情を深く掘り下げ、「罪と罰」というテーマで人間存在の本質を問いかけました。
企画から8年、製作費50億円超という異例の規模で制作され、色鉛筆風の革新的な映像表現で描かれています。
興行的には苦戦したものの、世界的には高い評価を受け、高畑勲監督の美学が極まった作品として、今も多くの人に愛され続けているのです。
人間的な感情を持つことの罪と、それでも生きることの美しさを描いた本作は、観る人の年齢や経験によって異なる感動を与えてくれる、深い作品と言えるでしょう。
『かぐや姫の物語』を観てみませんか
ここまで読んでくださって、きっとあなたは『かぐや姫の物語』に興味を持たれたのではないでしょうか。
もしまだ観ていないなら、ぜひ一度ご覧になってみてください。
一度観た方も、時間を置いて再び観ると、また違った感動があるはずです。
高畑勲監督が8年の歳月をかけて込めた想い、50億円を超える製作費で実現した美しい映像、そして「姫の犯した罪と罰」という深いテーマ。
これらは、実際に作品を観ることでしか本当には理解できません。
涙するかもしれませんし、心が痛むかもしれません。
でもそれは、あなたが人間らしい感情を持っている証拠です。
かぐや姫が地上で感じた喜びと悲しみを、あなたも一緒に体験してみてくださいね。
きっと観終わった後、この物語があなたの心に長く残り続けることでしょう。