葬儀豆知識

葬儀費用の負担は相続人?兄弟の負担は?判例で見る

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親が亡くなって、久しぶりにご自身の兄弟の方と会う人も多いのではないでしょうか。特に、子供の頃は仲が良かったけど、兄弟それぞれ家庭を持ってから疎遠になっているケースは、頻繁に聞かれます。

特に、亡くなってから再会したときに一番多いトラブルとしては、兄弟間で葬儀費用の負担は誰にするかについてです。兄弟の中には、長男なのに一切払わないの一点張り等です。

いやいや、自分の親が亡くなったら、通常の喪主は長男だし、長男が一切葬儀費用については一切出さないなんて、非常識!と思う方非常に多いです。しかし、法律では全く異なる見解がまっていました。

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今回は、兄弟間の葬儀費用の負担について実際の判例から見ていきます。

葬儀費用の負担は相続人?兄弟がいる場合の負担について

兄弟間の葬儀費用の負担についてですが、法律では以下のように定められています。

法律では葬儀費用の分担は兄弟がすると明確な決まりは一切ない

法律では、葬儀費用について兄弟が負担するという明確な決まりが一切ありません

一度、親族関係者で葬儀に出席したことのある人なら、誰しもが相続人は亡くなった人の子供として考え、当然葬儀を執り行うのも子供として判断されがちです。そういうものなんだと思っても致し方ありません。ただし、これは話がまとまっており、相続人が納得した場合です。

例えば、亡くなった親には兄弟が3人いたとしましょう。葬儀のときに、長男・次男が喪主を拒否して最終的には、三男が喪主をした場合、葬儀費用の負担は、三男になってしまいます。

一般的には、喪主は兄弟がいる場合、長男がすることが多いので、三男が喪主をしていたら、周りからどうなってるの?という目で見られます。長男や次男に特別な事情があれば話は別です。

葬儀費用の負担は喪主が負担する考えが主流

上記の例にしたがって、なぜ三男が喪主をすると葬儀費用の負担は三男になってしまうのかです。

考えとしては、長男や次男にもお金を出してほしいと誰もが考えますし、葬儀費用なんて10万、20万どころではなく、サラリーマンの年収くらい1日で出る場合もほとんどなのです。

実は、喪主が葬儀費用の負担する考えは、民法に基づきます。

第八百九十七条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。 

引用元URL:民法

民法897条より、祖先の祭祀は葬儀も含まれており、主宰すべきものには喪主が含まれています。以上のことから、葬儀費用に関しては、喪主の負担が相当であると解釈できます。

では、実際葬儀費用に関してトラブルがあったときの判例についてみていきましょう。

葬儀費用の負担の実際の判例は?

葬儀費用の負担について、裁判で争われていました。平成24年3月29日名古屋高等裁判所で行われた裁判になります。この裁判ではどのようなことが行われたのでしょうか。

平成24年3月29日判決名古屋高等裁判所の判例に記載

平成24年3月29日に行われた名古屋高等裁判所の判例では葬儀費用の分担以外にも行われているので、葬儀費用の部分だけ解説していきます。

判例の概要

主な登場人物は3人、亡くなった子供AとC、喪主を務めた亡くなった人の兄弟Bです。訴えとしては、喪主を務めていたBが、子供のAとCにも葬儀費用を支払って欲しいとのこと。

なお、Aは葬儀にも出席せず、Cは葬儀には出席したものの喪主をBから頼まれたが、断っている状況です。果たして、葬儀費用をAとCにも負担させることは可能なのでしょうかという事案です。

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判例の結論

判例の結果からは、棄却されています。結論としては、喪主をBがした時点で主宰者はBとして認められます。

この判例の場合、亡くなった人は常々Bに葬儀代に関しては年金でまかなえると話していたので、最終的には、亡くなった方の預貯金から出したということにより、AとCには支払いは不要と判断されました。

追悼儀式に要する費用については同儀式を主宰した者,すなわち,自己の責任と計算において,同儀式を準備し,手配等して挙行した者が負担 

引用元URL:平成24年3月29日判決 名古屋高等裁判所

法律では、上記の判例で、葬儀費用は喪主が支払ういい例として出ています。今後もこの傾向が続くことが考えられてるのです。

兄弟がいる人必見!葬儀費用で揉める前に知っておきたい4項目

兄弟間の葬儀費用の分担もなかなか大変なことになります。葬儀費用の分担する前に知っておきたいことをまとめておきます。

①亡くなった人が生前に決めている場合は、内容通りに執り行う

1つ目は、葬儀費用に関して亡くなった人が生前から葬儀代に関して決めていた場合は、取り決めた内容に沿ってお支払いが行われます。

例えば、生前葬儀代は兄弟仲良く分担でと話していたら、葬儀費用は兄弟の人数で割った額の負担となります。

②亡くなった人が特に決めていない場合は、喪主が負担

2つ目は、上記の判例のように、亡くなる方が特に取り決めを行っていない場合、喪主の負担になります。

揉めそうだと思えば、喪主を誰にするのかも話し合いが必要になります。そして、喪主にも民法で定義づけられているので、喪主をしたつもりはなくても、喪主と判断される場合もあるのです。

③喪主は、葬儀全般について取り仕切った人となる

3つ目は、民法897条により、葬儀に至るまで手配を行ったものは、喪主として判断されます。斎場の手配、連絡、お布施と大体的にやった方が喪主として認められます。

誰もやらないからでは、自分がと思って動いてしまうとその時点で喪主になるから注意が必要です。

④喪主から葬儀費用を香典プラス亡くなった人の預金から払う場合には、相続人全員の許可が必要

4つ目は、葬儀代金の支払いについてです。基本、香典の中から出し、足りない部分は亡くなった方の財産でとなっていますが、引き出すときには、相続人全員の同意が必要です。

判例の場合だと、AとCにも話を通す必要があります。葬儀当日は慌てて話を聞き忘れたことも考えられるので、きちんと覚えておきましょう。

葬儀費用についてどうしても争いになった場合

葬儀費用に関しては、どうしても払う払わないでトラブルになるケースがあるのです。兄弟仲良くというわけもにも行かず、金額も金額ですので致し方ありません。亡くなった方の多くは、できるだけ子どもたち、兄弟には迷惑をかけたくないと思っている人がほとんどです。

話し合いにも応じず、トラブルになった場合はどうすればいいのでしょうか。

弁護士に判断を委ねる

最終的には、弁護士に相談して、名古屋高裁の判例のように裁判になります。

多くの方は、裁判は費用もかかるしできたらそうまではいかずに納めたいと思っている人が多いです。中には、おかしいと思いつつも泣き寝入りしているケースもあります。

納得が行かない場合は、弁護士の無料相談でもアドバイスはいただけます。

まとめ

今回は、兄弟間の葬儀費用の分担についてです。通常ならば、兄弟仲良く分担したいですよね。しかし、実際の裁判の判決は、葬儀費用は、兄弟間でもあっても喪主が費用を負担するとなっています。

今後も葬儀費用は、喪主が負担する考えが変わらないので頭にいれておいたほうがいいでしょう。民法では、喪主も葬儀全般に取り仕切った人と定められています。

最後の最後まで揉めることのないようにしておきましょう。また、長男だから喪主をしなければいけない法律もないので、余計にトラブルの元になります。そうなる前に喪主はどうするのか話し合いが必要です。

大切なご家族が亡くなったら…
取り返しのつかないことになる前にまずは大まかな手順を知っておいてください!
→ 家族が亡くなったらすること【葬儀までの流れと手順】

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